債務整理の中でも、比較的手続きがシンプルであるため、多くの人々が任意整理を選択しています。しかしながら、状況によっては任意整理を行うことが適切でないケースがあります。
債務整理の代表的な手続きのひとつである任意整理について、どのようなケースで避けるべきかについて、以下で詳しく解説します。
目次
任意整理はしない方がいいケース6選
以上のような任意整理をしない方がいいケースとしては、次の6つが挙げられます。
- 元金36回~60回分割にした毎月の返済ができない
- 3年~5年の間に収入が下がる
- 弁護士・司法書士の費用がカットされる分よりも高い場合がある
- もともとの金利が低い
- 一時的に支払えないだけにすぎない
- 税金等の支払いができない
元金36回~60回分割にした毎月の返済ができない
まず、残元金を36回~60回分割にしたときに、毎月の返済ができなくなる場合には、任意整理は適切な解決策とはなりません。
たとえば、180万円の借金があるとして、60回(毎月返済する場合は5年)で分割すると、毎月3万円の支払いが必要になります。
しかし、家計の状況から毎月3万円の支払いができない場合があります。
このような場合に任意整理をすると、無理なく家計から払える額以上の支払いを5年も継続しなければならず、途中で返済ができなくなってしまうことがあります。
残元金を36回~60回で返済できない場合には、自己破産や個人再生の方が適切な場合があり、任意整理は避けるべきです。
3年~5年の間に収入が下がる
3年~5年の間に収入が減少する場合には、任意整理は適切な選択肢ではありません。
典型的な例は定年間近の方で、再雇用をしてもらえたとしても返済に回せる金額が大幅に減ることが予想される場合です。
任意整理は、一度和解をした返済内容を、収入が減少したからといって簡単に変更できるわけではありません。
このような場合には、任意整理は避け、自己破産や個人再生を利用することが望ましいです。
弁護士・司法書士の費用がカットされる分よりも高い場合がある
カットされる分よりも弁護士・司法書士への費用のほうが高い場合があります。典型的な例としては、残高が10万円を切るような極めて少ない場合です。
任意整理を弁護士・司法書士に依頼した場合にトータル5万円~7万円かけた場合には、費用がカットされる額よりも高くなる可能性があります。
このような場合は、任意整理をせずにそのまま返済することを検討し、債務の中で任意整理が意味を持つものだけに対して対処することが必要です。
もともとの金利が低い
任意整理は利息・遅延損害金をカットしてもらうことになりますが、もともとの金利が低い場合には、任意整理をしてもカットしてもらえる部分がなく、任意整理をする意味がないことがあります。
公的な借り入れや会社からの借り入れで利息がついていないもの、個人からの借り入れで利息がないものについては、任意整理は必要ありません。
一時的に支払えないだけにすぎない
一時的に支払えない場合には、貸金業者に相談すれば、一時的に利息の支払いのみで免除してもらえることがあります。
冠婚葬祭などで出費が必要な場合には、一時的に支払いが困難になることがありますが、貸金業者に相談することで解決できる場合があります。
税金等の支払いができない
支払えていないものが税金などである場合には、任意整理ではなく、直接税務署・役所と交渉する必要があります。
任意整理は貸金業者との交渉を目的としたもので、貸金業者に返済できない場合に、社会的な立場から強制するための手段です。
しかし、税金などに関しては法律で定められた徴収方法があるため、税務署・役所が裁量で減額することはできません。
支払いが困難な場合には延納という手続きを取る必要があり、この場合は直接役所で事情や支払い計画などについて説明する必要があります。
任意整理とは?基礎知識をおさらい
任意整理とはどのようなものか確認していきましょう。
任意整理とは
任意整理とは、債務整理の一種であり、貸金業者と交渉して、借金を軽減する方法です。
貸金業者と交渉し、減額された金額で和解契約(または準消費者金融契約)を結ぶことで、新しい条件で返済することができます。
個人の債務整理においては、「任意整理」という用語が一般的に使われますが、時には「私的整理」「内部整理」と呼ばれることもあります。
任意整理は、債権者と個別に交渉するため、不利益を生じる債権者(例えば、連帯保証が付いた奨学金や、担保が付いた住宅ローンなど)を除外することができ、柔軟な債務整理が可能となります。
任意整理での債務軽減の程度
交渉によって内容は変わりますが、通常、任意整理では元金を36回〜60回の分割払いで返済することになります。
従来の契約では、利息と一緒に返済しなければならず、延滞した場合には遅延損害金も発生しますが、任意整理では利息や遅延損害金がカットまたは大幅に減額されることがあります。
他の債務整理の手続きとの比較
債務整理には、自己破産や個人再生といった手続きがあります。自己破産では債務が免責され、個人再生では大幅に減額された債務を分割して支払うことができます。
任意整理は元本の支払いが必要ですが、自己破産や個人再生に比べると減額される範囲が異なります。
任意整理の流れ
任意整理の手続きは以下の通りです。
- 弁護士または司法書士に相談・依頼
- 貸金業者と交渉
- 和解契約書を取り交わす
- 返済を開始する
任意整理は契約に基づいて行われるため、貸金業者と自分で交渉することもできます。
しかし、元金の分割払いの和解をするためには、弁護士または司法書士の支援が必要です。通常、弁護士または司法書士に依頼して手続きを進めます。
任意整理は弁護士・司法書士どちらに相談・依頼するのが良い?
債務整理については、弁護士・司法書士の両者が取り扱っています。しかし、自己破産や個人再生の場合は、司法書士には権限の制限があるため、向かないことがあります。
一方、任意整理では、債務の額が140万円以下であれば、弁護士と司法書士の間に権限の差はあまりありません。
そのため、司法書士の中には任意整理に強い専門家もいますので、相談してみることをお勧めします。
任意整理に失敗するとどうなるのか
任意整理をしないほうが良い人として、「元金を36回〜60回に分割して返済することができない」人を挙げさせていただきました。
途中で返済ができなくなり、任意整理が失敗するからですが、任意整理に失敗するとどうなるのか、詳しく見ていきましょう。
任意整理をするとどのような返済義務を負うか
まず、任意整理後にはどのような返済義務を負うのか確認しましょう。任意整理では、債務者と債権者が和解し、債務者は元金を36回〜60回の分割で返済することが決まります。
例えば、残元金が30万円の貸金業者に対して、毎月5,000円の返済を60回分割で行うことになった場合、残債務を全て返済するためには5,000円×60回=300,000円が必要となります。
返済できず任意整理に失敗するとどうなるのか
では、返済ができず任意整理に失敗した場合はどうなるのでしょうか。
任意整理の和解書には、返済ができなかった場合の取扱いについても記載されています。多くは、2回ないし2回分の返済が滞ると、残った元金を一括請求することができるとされています。
つまり、毎月5,000円の返済をする任意整理を組んだ場合には、2回分の返済が滞ると、5,000円×2回分=10,000円分の返済が滞ったことになり、債権者は残りの元金を一括請求することができます。
当然、一括請求額を返済することは難しいため、再度債務整理を行う必要が生じます。
任意整理に失敗すると周りの人にバレる?
任意整理に失敗した場合、周りの人に知られてしまうことはあるのでしょうか。
実は、任意整理に失敗すると、債権者からの督促が自宅に届きます。そして、それを無視すると、債権者は裁判を起こし、最終的には財産の差し押さえを行うことがあります。
自宅に同居している人がいる場合には、郵送物でバレてしまう可能性があります。
また、差し押さえの対象として給与が差し押さえられることがありますが、この場合には会社に対して通知がされますので、会社に知られてしまうことになります。
したがって、任意整理に失敗する前に、弁護士や司法書士に相談し、適切な対策を講じることが大切です。
任意整理をした方がいい人
以上のことを踏まえて、任意整理をした方がいい人は次の通りです。
保証人や担保がある債務がある場合
債権者の中に保証人や担保がある債務がある場合には、債務整理の中でも任意整理をするのが良いです。自己破産や個人再生の場合には、特定の債権者だけを優遇することができません。
しかし、任意整理であれば、交渉をする債権者を選ぶことができるので、保証人や担保がついている債権者を外して債務整理をすることが可能です。
保証人がついていて迷惑をかけたくない、担保となっている物の所有権を失いたくない、という場合には任意整理を利用します。
自己破産・個人再生ができない場合
自己破産や個人再生は借金が多くなって支払不能となっている場合でなければ利用できません。
そのため、借金の額が多くなくても、早めに借金を返してしまいたい場合には、任意整理を利用します。
また、過去7年以内に自己破産や個人再生をしたことがある場合には、再度の自己破産や個人再生はできません。この場合に返済ができない場合には、任意整理をするしかありません。
任意整理をするなら早めに行動しよう!おすすめの法律事務所3選
どのような場合でも、任意整理は36回~60回の分割返済ができないと利用できません。
債務整理をするかどうか悩んでいるうちに、借り入れが増えてしまい、任意整理で返済できない状態になると、任意整理の利用ができなくなってしまいます。
任意整理を債務整理の選択肢に入れたい場合は、借金が大きくならないうちに、弁護士や司法書士に相談をするようにしましょう。
サンク総合法律事務所
名称 | 弁護士法人サンク法律事務所 (旧:樋口総合法律事務所) |
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所属 | 第二東京弁護士会 |
所在地 | 東京都中央区八丁堀4-2-2 UUR京橋イーストビル2階 |
電話番号 | 0120-281-739 |
代表弁護士 | 樋口 卓也 |
ホームページ | https://thank-law.jp/ |
サンク総合法律事務所は、借金問題に特化した法律事務所として、任意整理や自己破産などの債務整理にも力を入れています。
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また、弁護士による無料相談も実施しており、個々のケースに応じた適切な解決策を提案しています。
任意整理の費用
- 着手金55,000円~/件
- 報酬金11,000円~/件
- 減額報酬11%
- 過払い金報酬 回収額の22%(訴訟の場合には27.5%)

弁護士法人・響
名称 | 弁護士法人 響(ひびき) |
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所在地 |
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電話番号 |
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代表弁護士 | 西川研一 |
ホームページ | https://hibiki-law.or.jp/ |
グループ |
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弁護士法人・響は、全国6ヶ所に拠点を有し、多数の弁護士を抱えるとともに、税理士法人・行政書士法人・社会保険労務士法人・調査会社(探偵)とグループを組んで活動をしている弁護士法人です。
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任意整理の費用
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弁護士法人ひばり法律事務所
名称 | 弁護士法人ひばり法律事務所 |
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代表弁護士 | 名村泰三 |
電話番号 | 03-5638-7288 |
FAX番号 | 03-5638-7289 |
業務時間 | 平日午前10時~午後7時 |
公式ホームページ | https://hibari-law.net/ |
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- 減額報酬 11%
- 経費 5,500円/1社

まとめ
このページでは、任意整理を選択しない方が適切なケースを中心に解説しました。
任意整理は、債権者と個別に交渉するという特徴を持ち、保証人が存在する場合や債務整理の対象から除外したい債務がある場合に適している債務整理方法です。
しかし、返済が前提の手続きであるため、借金が膨らむ前に早めに弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。