金融問題に直面している場合、借金を免責する自己破産の選択肢が頭に浮かびます。
しかし、それが奨学金にどのように影響するのか、そしてそれが連帯保証人に及ぼす可能性のある影響はどの程度なのか、多くの人が疑問に思うことでしょう。
この記事では、自己破産が奨学金と連帯保証人にどのような影響を及ぼすか、またそれをどのように対処すべきかについて詳しく解説します。
目次
自己破産すると奨学金の支払いは免責されるのか?
自己破産とは、債務者が所有する資産をすべて処分し、その代わりに債務を免除される法的手続きです。結論から言うと、奨学金も免責の対象となっています。
借金の理由が免責不許可事由に当たらなければ免責は可能
自己破産手続きを進める際、すべての借金が必ずしも免責されるわけではありません。
特に免責が認められない理由(免責不許可事由)がある場合、その債務は免責されずに残る可能性があります。
奨学金については、非免責債権にあたらないため免責可能となることが多いです。
しかし、奨学金が違法な行為に関連している場合や、借金の理由がギャンブルなどの場合は、免責不許可事由となる可能性があります。
ただし支払不能の状態でなければ自己破産の手続きはできない
自己破産の手続きを開始するためには、借金の返済が困難である、つまり支払不能の状態であることが必要です。
したがって、奨学金の返済が可能な状態であれば、自己破産を申請することはできません。返済が困難であると認められる場合、奨学金の債務は免責され得るのです。
税金や慰謝料は非免責債権となるため注意
すべての債務が免責の対象となるわけではありません。税金や罰金、慰謝料など一部の債務は「非免責債権」とされ、これらは自己破産を行っても免責されません。
これは公的な義務や社会的な規範に関わる債務が対象となることが一般的です。
したがって、奨学金が何らかの形でこれらの債務に該当する可能性がある場合は、自己破産で免責されない可能性もあります。
自己破産における非免責債権は、免責されない債権を指します。これらは自己破産手続きが完了しても支払い義務が残るもので、以下のようなものが一般的に挙げられます。
- 債務者が故意に他人を不利益な状態に陥らせた結果生じた債権
- 債務者が犯罪を犯し、その結果生じた債権(罰金、保釈金など)
- 過失により他人に損害を与えた結果生じた債権
- 扶養義務による債務
- 雇用関連の債務(賃金の未払い等)
- 税金や公共料金に関連する債権
- 労働者の退職給付債権
このような債務は自己破産によっても免責されません。特に税金については、国や地方自治体に対する債務であるため、免責が認められないケースが多いです。
専門家に相談して、個々の債務が免責可能かどうかを確認することが重要です。
奨学金のある状態で自己破産すると保証人に迷惑がかかる
自己破産は、個人が抱える財政的困難から脱出する一つの手段ですが、その選択は周囲の人々、特に連帯保証人や保証人にも影響を及ぼします。
自己破産で奨学金の返還を免れるのは本人のみ
自己破産を申請すると、借金を全て清算することができます。これには奨学金の返還義務も含まれます。
しかし、免責されるのは申請者本人だけで、保証人や連帯保証人の債務は免除されません。
これは奨学金が本人の教育費という個人的な債務であるため、保証人や連帯保証人がその責任を負うという契約に基づいています。
連帯保証人・保証人に奨学金の返還請求がいく
本人が自己破産をしてしまうと、その奨学金の返還請求が保証人や連帯保証人に転嫁されます。
つまり、本人が返済能力を失った時点で、保証人や連帯保証人は債務全額を返済する義務が発生するのです。
また、本人が自己破産すると、連帯保証人や保証人(家族など)が巨額の返済義務を負うことになり、結果として連鎖的に自己破産を余儀なくされるケースもあります。
連帯保証人や保証人が経済的な困窮に陥ると、一家全体が破産するという悲劇が起こることもあるのです。
連帯保証人が奨学金を返還すると、求償権が発生して自己破産した人の債権者となる
自己破産した借主の奨学金返還義務が、連帯保証人に転嫁されると、連帯保証人はその借主に対して求償権を持つことができます。
求償権とは、保証人が債務を肩代わりして返済した後、借主からその金額を取り戻す権利のことを言います。
つまり、連帯保証人が奨学金を返還すると、その分の金額を元の借主から回収する権利が生じるのです。
この場合、連帯保証人は自己破産した借主の「債権者」となります。借主が自己破産していても、借主に対する債権(返済を求める権利)は消滅しないのです。
ただし、自己破産した借主から実際に回収できる金額は、借主の財産状況や破産手続の結果によります。
なお、求償権の存在は、保証人が自己破産をする際にも影響を及ぼします。保証人が自己破産手続を行う場合、求償権は財産の一部とみなされ、他の債権者と同じく分配対象となるため、その点も注意が必要です。
奨学金のある人が自己破産するときに注意したいこと8つ
自己破産は借金の全てを無くすことが可能ですが、それには重要な注意事項がいくつか存在します。
奨学金だけを外して自己破産することはできない
自己破産とは法律により全ての借金を免除される手続きのことです。これは、個々の債権について選択することはできず、全ての債権(奨学金も含む)が含まれることを意味します。
したがって、例えばクレジットカードの借金だけを対象に自己破産し、奨学金は除外するという選択肢は存在しません。
日本学生支援機構の延滞は信用情報機関に記録される
奨学金を返済することができない場合、日本学生支援機構(JASSO)はその事実を信用情報機関に報告します。
その結果、信用情報に「滞納情報」が記録され、新たに借入やクレジットカードの取得を行う際に審査で不利となる可能性があります。
奨学金は低金利なので任意整理のメリットが少ない
奨学金は、多くの学生が教育を続けるために必要な資金を得る手段であり、一般的にその金利は非常に低いとされています。この特性が任意整理という債務整理手段に影響を与えます。
任意整理とは、債務者と債権者が直接交渉を行い、返済計画を再設定する手続きのことを指します。通常、高金利の借入れに対しては、利息の削減が大きなメリットとなります。
しかし、既に金利が低い奨学金に対しては、この利息の削減効果が小さく、任意整理のメリットは相対的に少ないといえます。
その一方で、返済義務そのものがなくなる自己破産という選択肢は、返済額が大幅に減額されるという大きなメリットがあります。
警備員など一部の職業や資格が制限される
自己破産を行うと、特定の職業に就いている方や資格を持つ方には制限が発生します。
具体的には、警備員、公認会計士、弁護士など、公的な信用を必要とする職業や資格を保有している場合、その資格を失う可能性があります。
これは、自己破産が信用情報に記録され、それにより公的な信用が失われることが原因です。
そのため、自己破産を考えている方は、自身の職業や資格を持つことにどのような影響が出るかを事前に確認する必要があります。
クレジットカードの作成・更新ができない
自己破産を行った場合、信用情報に記録され、クレジットカードの発行や更新が一時的にできなくなります。
クレジットカード会社は、信用情報を基に顧客の信用度を評価するため、自己破産を行った人々はリスクが高いと判断され、クレジットカードの発行や更新が拒否されることが多いのです。
また、既に持っているクレジットカードも使用できなくなる場合がほとんどです。
一定の期間(5~7年程度)が経過し、信用情報が改善されると再びクレジットカードを申し込むことが可能になります。
この間には現金生活を余儀なくされるため、生活の計画を立て直す必要があります。
ブラックリストの掲載期間はローンを組みにくい
自己破産を行うと、その情報は信用情報機関に登録されます。
この期間は一般的に5年とされており、その間はいわゆる「ブラックリスト」に掲載され、新たなローンやクレジットカードの審査に不利に働く可能性があります。
したがって、自己破産を検討する際には、その後の生活設計をしっかりと見据えることが重要です。
銀行が債権者の場合は口座が凍結される
自己破産手続きを進める際、債務者が使用している銀行が債権者である場合、銀行は債権回収のために口座を凍結することがあります。
凍結されると引き出しや送金ができなくなり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
官報で破産者の情報が公告される
自己破産の手続きが成立すると、その情報は公の官報に掲載されます。これは一般にアクセス可能な情報であり、氏名や住所、生年月日などが公開されます。
プライバシーを大切にする方にとっては、この点も大きなデメリットとなることでしょう。
専門家から一言
自己破産以外!奨学金が払えないときの救済制度
奨学金の返済が困難になった場合、自己破産が唯一の解決策だと思われがちですが、実はそれ以外にも様々な救済制度が存在します。
ここでは、それらの制度について詳しく解説していきます。
減額返還制度:適用条件は年収325万円以下など
奨学金の減額返還制度は、災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方を対象としています。
減額返還制度は、当初約束した割賦金を減額すれば返還可能である方を対象としています。
一定期間、当初約束した返還月額を減額して、減額返還適用期間に応じた分の返還期間を延長する制度です。
具体的には、毎月の返済額を2分の1もしくは3分の1に減額できます。ただし、利息を含む返済額は変わりません。
また、返済期間は、2分の1を選んだ場合は2倍に、3分の1を選んだ場合は3倍に延長されます。
適用条件としては、以下の3つが挙げられます。
- 災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難であること
- 願出及び審査の時点で延滞していないこと
- 口座振替(リレー口座)加入者であること
以上が奨学金の減額返還制度についての概要と適用条件です。
出典:減額返還制度の概要
返還期限猶予制度:適用条件は年収300万円以下など
奨学金の返還期限猶予制度は、返還が困難な場合に利用できる救済制度であり、一旦審査に通れば、1年間は返済期限が延期されます。
返還期限猶予は1年ごとに願い出が必要で、期間は通算10年が限度です。返還が困難な場合には、減額返還制度や返還期限猶予の制度を利用することができます。
返還期限猶予には一般猶予と猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予の2種類があります。
返還免除:障害になった人や優れた業績を残した人は利用可
奨学金の返還免除には、いくつかの制度があります。
例えば、死亡や障害などの理由で返還ができなくなった場合や、第一種奨学金を借りている大学院生が研究業績などで優秀な場合に適用されます。
返還免除を受けるには、日本学生支援機構と在籍大学における審査に通過する必要があり、必要書類を提出する必要があります。
また、返還免除の枠は、第一種奨学金を借りている人数に応じて、大学院ごとに均等に割り振られており、大学院内での競争となります。
専門家から一言
【体験談】自己破産に成功した人の口コミ
2024年10月、自己破産に成功した人の最新の口コミ・体験談を集めました。これから債務整理をしようか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。58歳 男性 自営業
34歳 女性 派遣社員
42歳 男性 不動産業者
29歳 男性 プログラマー
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⑤司法書士法人はたの法務事務所
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まとめ
自己破産は借金を一掃する手段ではありますが、奨学金の返済に関しては免責されないというのが基本的な原則です。
しかし、日本学生支援機構の奨学金については、特例として自己破産により免責が可能となる場合もあります。
その一方で、連帯保証人には返済義務が移るため、その人物の財務に重大な影響を及ぼす可能性があります。
自己破産を考える前に、全ての可能性を慎重に検討し、専門家の助けを借りることを強く推奨します。