自己破産は借金からの解放を意味する一方で、人生を一変させる重大な決断です。「自己破産したら生活は一体どう変わるのだろう?」という疑問を抱く人は少なくありません。
本記事では、自己破産後の生活とは具体的にどのようなものか解説。
自己破産の手続きの流れや理解しておきたい注意点、そして自己破産後に心配しなくても良いことについて詳しく解説していきます。
目次
自己破産した人の末路はどうなるのか
自己破産という言葉を聞くと、絶望的な未来を連想するかもしれません。実際の影響はどのくらいなのでしょうか。
ここでは、自己破産が個人の生活にどのように影響を及ぼすのか、そしてその後の人生はどのように変化するのかを考察します。
多くの人が想像するような悲惨な生活にはならない
「自己破産」という言葉は、生活の全てが終わるというイメージを喚起します。しかし、現実はそうではありません。
自己破産は、借金を完全に免除されて、金銭的な重圧から解放される手段です。生活をゼロから再スタートさせることができます。
多くの人が想像するような悲惨な生活にはなりません。破産法は個人に二度と同じ金融的困難に直面しないようにするための法的な助けを果たしてくれます。
ざっくりとした生活イメージは?
マイナス点としては、信用情報に傷がつくため、しばらくの間はローンを組むことが難しくなったり、クレジットカードが作れなくなったりします。また、自由に使えるお金が減るため、節約が必要になるでしょう。
ですが、借金の返済に追われる日々から解放され、精神的には楽になります。贅沢はできませんが、いわゆる普通の暮らし(衣食住が整っていて仕事にも就ける状態)は問題なくできるため、その点は安心してください。
さらに詳しい自己破産後の生活イメージについては次章にて解説します!
借金のストレスから解放されて心身が健康になる
金銭的な困難は、ストレスや不安、抑うつなどの精神的健康問題を引き起こす主要な原因の一つです。
自己破産を選択すると、ストレスから解放され心身の健康を回復させることができます。
金融機関の信用スコアには傷が付いてしまいますが、借金の苦しみに比べれば大きなストレスではありません。なお、傷ついた信用情報は適切な財政管理ができていれば時間とともに修復されていきます。
早く自己破産すればよかったと思う人がほとんど
自己破産は一般的には最後の手段とみなされることが多いのですが、決して悪いことではありません。
破産者の多くは、自己破産の後に自分たちの生活が改善し、経済的な厳しさから解放されたと感じています。
「人生の再スタートが可能となり、生活を立て直すことができた」と喜びの声を挙げる人がほとんどです。
特に、長期間にわたる返済苦から解放された人々は、「早く自己破産を選択していれば良かった」と後悔する人も。
自己破産が新たな人生の門出となり、自身の精神的・経済的な健康にプラスに作用したと感じることでしょう。
お金の価値と管理方法を学び直すきっかけにもなる
破産後の人生ですが、経済的に困難な状況に陥った経験を通じて、お金の価値と管理方法を再度学び直す方が多いです。失敗した教訓を活かして、新たな生活を送ることができるのです。
この視点から見れば、自己破産は終わりではなく、ある意味で新たな始まりとも言えるでしょう。
末路は悲惨を想像するのではなく、ポジティブに捉えることが大切です。
お金の管理を徹底することで、経済的に自立して、より良い未来に向けて前進するための一歩となり得るのです。
自己破産後の生活は具体的にどうなる?
自己破産した人の生活はどのように変わるのでしょうか。具体的な変化や制限を理解することで、自己破産の選択がもたらす影響を深く理解することができます。
ここでは、生活に対する悪影響を中心にプロの視点で解説していきます。
決済手段はクレジットカード以外となる
自己破産後に最も注意したいのが、クレジットカードの使用が禁止されることです。ほとんどのカード会社では、破産後数年(破産手続き終了から5〜7年程度が目安)は新たなカードの発行を認めていません。
そのため、生活の中で決済が必要な場面では、デビットカードやプリペイドカード、現金を使用することになります。
プリペイドカードはあらかじめ所定の金額をチャージして使用するカードで、クレジットカードのように後払いではないため、破産後でも利用できます。
デビットカードは銀行口座に紐付けられたカードで、購入時に口座から直接引き落としとなります。口座に記録が残るため、生活費の管理にも役立ちます。
クレジットカードを持てるタイミングについて
カード会社ごとに基準が変わるので明確には分かりませんが、自己破産から5〜7年が経過し、その間に新たな借金をせず安定した収入を維持できていれば、徐々に審査に通過しやすくなります。
一部の職業や資格は制限される
自己破産後は一部の職業や資格に制限が発生します。これらは破産した人が信用力を失ったと考えられるためです。
具体的には、弁護士や公認会計士、不動産仲介業者などの資格を保持している場合、自己破産によりその資格を失う可能性があります。
また、金融機関や保険会社などの一部企業では、自己破産者の採用を控える傾向にあります。
しかし、このような制限は一時的なもので、一定期間が経過すれば再び資格を取得したり、元の職種に復帰することが可能です。
自己破産で制限される可能性がある職業・資格一覧
自己破産で制限がかかる可能性がある主な職業と資格は以下の通りです。
士業関係
- 弁護士
- 弁理士
- 税理士
- 公認会計士
- 司法書士
- 行政書士
- 社会保険労務士
- 土地家屋調査士
- 通関士
- 不動産鑑定士
- 宅地建物取引士
公職・団体役員関係
- 国会議員、地方議会議員
- 裁判官、検察官
- 公証人
- 商工会議所、信用金庫、日本銀行などの役員
- 公正取引委員会、教育委員会の委員
- 人事院の人事官
その他の職業・資格
- 貸金業者の登録者
- 生命保険募集人
- 質屋営業者
- 警備業者の責任者・警備員
- 旅行業務取扱者・管理者
- 建築業者
- 下水道処理施設維持管理業者
- 風俗業管理者
- 廃棄物処理業者
- 中央競馬の調教師・騎手
- 交通事故相談員
- 固定資産評価員
持ち家だった人は財産処分に伴い引っ越しを行う
自己破産を行うと、所有している不動産や自動車などの財産は破産管財人により処分されます。
これは、負債を免除する代わりに、所有している財産を売却し、その収益で債権者に対する償還を行うためです。
したがって、自己破産を選択した場合、持ち家の場合は引っ越しを余儀なくされる場合がほとんどです。
しかし、生活を維持するための最低限の家具や日用品などは、自己破産手続きの際に保護されます。
また、賃貸住宅に住んでいる場合は、引越しを強制されることはなく、引き続きその住居を維持することが可能です。
信用情報機関の登録によりローンがしばらく組めない
自己破産を行った情報は信用情報機関に登録され、その情報は一定期間保管されます。この期間は一般的に5年から10年で、その間は新たにローンを組むことが困難となります。
これは、金融機関がローンの審査を行う際に信用情報を参照するためで、自己破産の記録があると信用力が低下し、ローンの承認が得られにくくなります。
しかし、登録期間が経過すれば再びローンを組むことが可能となります。
弁護士費用などは分割で支払う
自己破産手続きは法的なプロセスであるため、弁護士による支援が必要となります。そのため、弁護士費用や裁判所への申立て費用などの出費が発生します。
しかし、自己破産を考える人々はすでに財政的な困難に直面しているかと思います。そのため、これらの費用は分割払いにすることができます。
多くの弁護士は分割払いを受け入れているので、破産申立ての前に全額を支払う必要はありません。
自己破産に必要な費用の目安とは?
以下、ざっくりとした目安ですが自己破産に必要な費用の目安を記載しておきます。多めに見積もって70万~100円程度はかかると想定しておきましょう。
【裁判所に支払う費用】
申立手数料
- 個人の場合は1,500円分の収入印紙が必要
- 法人の場合は1,000円分の収入印紙が必要
予納郵券代
債権者への通知に必要な郵便切手代のこと。
- 同時廃止の場合:約1,000円
- 少額管財・通常管財の場合:約4,000円
予納金
破産管財人の報酬等に充てられる。
- 同時廃止の場合:約1.2万円
- 少額管財の場合:約22万円
- 通常管財の場合:負債額に応じて50万円〜
【弁護士費用】
着手金、成功報酬、実費込みで30〜80万円程度
専門家から一言
自己破産で借金免除される代わりに失うものまとめ
自己破産は、個人が負債を免除する手段の一つですが、その過程ではいくつかの物事を失います。
以下に主な失うものを一覧し、それぞれについて解説します。
財産
自己破産手続きにおいては、個人の所有する財産が破産管財人によって処分され、その収益で債権者に対する償還が行われます。
これには家、車、現金、銀行口座の預金、株式、生命保険の払込み金等が含まれます。ただし、生活を維持するために必要な最低限の財産(日用品、職業上必要な道具など)は除外されることが多いです。
信用情報
自己破産した情報は信用情報機関に登録されます。
一般的にこの情報は5年から10年間保管され、その間新たにローンやクレジットカードを組むことが困難になります。
クレジットカード
自己破産した場合、既に所有しているクレジットカードは使えなくなります。
また、一定期間は新たなカードの発行が認められません。
一部の職業や資格
自己破産した場合、弁護士や公認会計士、不動産仲介業者など、一部の職業や資格に制限が発生します。
また、金融機関や保険会社などの一部企業では、自己破産者の採用を控える傾向があります。
名誉・社会的信用
自己破産は公に記録されるため、個人の名誉や社会的信用に影響を与える可能性があります。特に個人事業主や自営業者は、ビジネスパートナーや顧客からの信頼を失う可能性があります。
ただし官報の記載については、多くの人が閲覧するものではないため、あまり気にしなくて大丈夫です。
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自己破産しても心配しなくていいこと
自己破産は大きな決断であり、財産や信用を失うことがある一方で、多くの誤解や不安も存在します。しかし、実際には心配する必要のない点も多いです。
以下でそれらの点について具体的に解説します。
結婚や就職で不利になることはない
自己破産は個人の信用情報として記録されますが、結婚や一般的な就職活動に直接影響するものではありません。
たとえば、結婚相手やその家族に自己破産の情報を開示する法的な義務はなく、また、結婚に関して信用情報機関から情報が提供されることもありません。
同様に、就職活動においても、多くの企業は個人の信用情報を参照することはありません。
勤務先の報告は不要
自己破産をする際に、現在の勤務先にその事実を報告する義務はありません。裁判所や弁護士から勤務先に連絡がいくことも、音信不通になってしまうなど特別な状況でない限りはありません。
ただし、勤務先が信用情報をチェックする業種である場合や、雇用契約によって報告義務がある場合は例外です。
破産手続き期間でなければ旅行に行ける
自己破産の手続きが進行中でなければ、国内外への旅行は可能です。ただし、破産手続き中は裁判所の許可が必要になることがあります。
また、旅行費用が贅沢であると判断された場合、それが借金返済に充てられるべきであったとみなされ、問題となる可能性もあるので注意してください。
携帯電話は分割払いでなければ購入できる
自己破産後も、分割払いやクレジット契約を結ばなければ、携帯電話を購入することは可能です。
多くの通信会社では、前払い制度やデビットカードを用いた支払いを選択することができます。
ただし、キャリアとの契約更新や新規契約を行う際に、信用情報がチェックされ、クレジットに基づく契約は難しくなることがあります。
年金や生活保護の対象から外れない
自己破産をしても、基本的に年金や生活保護の受給資格には影響を与えません。国民年金や厚生年金などの公的年金は自己破産の手続きから除かれ、将来的に受け取ることができます。
また、生活保護についても自己破産が直接的な不利益をもたらすわけではありません。
生活保護は個人の生活状況や所得に基づいて審査され、自己破産自体が受給資格に影響を及ぼすものではないからです。
専門家から一言
自己破産する前に考えておきたいデメリット・注意点
自己破産は借金の返済が困難になった時の最終的な手段の一つですが、デメリットや注意点も存在します。
以下に、自己破産を検討する際に考慮すべきデメリットと注意点を詳しく解説します。
- 信用情報機関のブラックリストに載る
- 官報に公告される
- 連帯保証人に迷惑をかける
- 同居の家族には自己破産の事実を隠せない
- 解約返戻金が20万円を超える保険は解約される
- 免責不許可事由に該当すると自己破産できない
- 免除されない債務がある
信用情報機関のブラックリストに載る
自己破産をすると、その事実は信用情報機関に登録され、一定期間(5年~)ブラックリストに掲載されます。
この期間中は、新たな借入やクレジットカードの発行が困難となり、また住宅ローンなど大きなローンを組むことがほぼ不可能となります。
また、自己破産の事実は消費者金融などから借り入れをする際の審査にも影響を及ぼします。
官報に公告される
自己破産手続きは、その開始から免責決定までの一連の手続きが、法務省の公式告示である「官報」に公告されます。
これは一般に公開される情報であり、自己破産の事実が社会的に開示されることを意味します。
しかし、官報を常にチェックしている人は少なく、特に探さなければ見つけられることは難しいです。
連帯保証人に迷惑をかける
自己破産をすると、連帯保証人が借金の返済を求められる可能性があります。
そのため、連帯保証人に迷惑をかけないためにも、自己破産を決断する前に連帯保証人と十分な話し合いを行い、その事実を理解してもらうことが必要です。
同居の家族には自己破産の事実を隠せない
自己破産手続きは郵便物が頻繁に届くため、同居している家族にその事実を隠すのは困難です。
なお、自己破産は家計に大きな影響を及ぼす可能性があるため、家族との信頼関係を保つためにも、事前に話し合うことが推奨されます。
自己破産すると家族はどうなる?影響すること、しないことを分かりやすく解説解約返戻金が20万円を超える保険は解約される
自己破産を申し立てると、解約返戻金が20万円を超える生命保険や損害保険は、財産として差し押さえられ、解約されます。
理由は、これらの保険金が借金の返済に充てられるためです。
- 20万円以上の財産は基本的にすべて処分され、現金化されて債権者に支払われる
- 積立型の生命保険等で、解約返戻金が20万円以上ある場合は、破産手続開始決定時に解約が必要
- 生命保険、医療保険、学資保険、個人年金、損害保険等、保険の種類を問わず、解約返戻金の合計額が20万円を超える場合は原則としてすべて解約処分の対象
解約返戻金が20万円未満の保険は、自由財産として認められ、解約せずに維持できます。複数の保険契約がある場合は、解約返戻金は合算して20万円超えるかどうかを判断されます。
保険を掛けている人は、自己破産前にこの点をしっかりと理解し、必要な対策を講じることが必要です。
免責不許可事由に該当すると自己破産できない
虚偽の情報を提供したり、不正な手段で借金を作ったりした場合など、法律で定められた一定の事由(免責不許可事由)に該当すると、自己破産しても借金が免除されません。
これらの事由に該当しないか、該当する可能性があるかを事前に確認し、必要な対策を講じることが重要です。
自己破産で免責不許可事由にあたる具体的な行為
以下の行為は、自己破産において免責不許可事由にあたるため注意ください。
自己破産における主な免責不許可事由は以下の通りです。
破産財団の価値を不当に減少させる行為(破産法252条1項1号)
財産の隠匿、損壊、不利益な処分などにより、破産財団の価値を不当に減少させる行為をした場合
→例:破産手続開始後に、破産管財人に秘匿のまま現金を費消(使い果たす)した
著しく不利益な債務負担行為・処分行為(破産法252条1項2号)
著しく不利益な条件で債務を負担したり、財産処分を行った場合
→例:債務整理を弁護士に依頼後、申立て準備に非協力で、換金目的で携帯電話を購入し廉価売却した
非義務行為についての偏頗行為(破産法252条1項3号)
特定の債権者のみを優遇し、平等に扱わない行為をした場合
→例:支払不能後に一部の債権者のみに弁済期前の弁済をした
浪費、賭博その他の射幸行為(破産法252条1項4号)
浪費やギャンブル、投資などで借金した場合
虚偽表示による信用取引(破産法252条1項5号)
嘘をついて借金をした場合
既往歴調書等の隠匿等(破産法252条1項6号)
裁判所に虚偽の債権者一覧表を提出するなどした場合
虚偽の債権者名簿の提出(破産法252条1項7号)
特定の債権者を除外する目的で虚偽の債権者名簿を提出した場合
調査協力義務違反行為(破産法252条1項8号)
裁判所や破産管財人の調査に協力しない場合
過去7年以内の免責許可等(破産法252条1項10号)
過去7年以内に自己破産で免責を受けていた場合
ただし、これらの免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量で免責が認められる「裁量免責」の制度があります。実務上は、免責不許可事由があっても裁量免責が認められるケースは多いです。
免除されない債務がある
自己破産しても免除されない債務が存在します。これには、税金や罰金、過去の養育費などが含まれます。
自己破産をしても免除されない債務(非免責債権)
- 租税等の請求権
→国税や地方税などの滞納分、国民年金保険料・健康保険料などの滞納分など - 日本学生支援機構の奨学金等
- 罰金、科料、刑事訴訟費用等
- 故意または重大な過失による不法行為に基づく損害賠償請求権
→故意や重過失による交通事故の損害賠償金など - 不法な原因に基づいて生じた債務
→犯罪行為を原因とする損害賠償債務など - 婚姻費用や養育費など
- 雇用関係に基づく使用人の給料等
- 破産手続開始後に生じた債務
税金や公共料金の滞納分、犯罪や不法行為による損害賠償金、養育費などは自己破産をしても免責されず、支払い義務が残ります。
一方、多重債務の原因となりやすいクレジットカードやキャッシングの借金などは免責の対象となります。
自己破産を申し立てる前に、自分が持っている債務が免除されるのかどうかを確認し、必要なら専門家に相談することをお勧めします。
専門家から一言
自己破産の手続きの流れとは?
自己破産は、弁護士の助けを借りるため個人でやることとしては簡単ですが、実際に行われる手続きは複雑です。
今回は、自己破産の主な手続きである、「同時廃止事件」「少額管財事件」「管財事件」の中から、同時廃止事件と少額管財事件について詳しい流れを解説します。
同時廃止事件の概要と流れ
同時廃止事件は、財産がほとんどない人が自己破産をする場合に適用される手続きです。
この手続きでは、裁判所が破産者の財産を調査し、その結果財産がほとんどないと判断された場合、財産の管理と分配を行う「管財手続き」を省略することができます。
流れとしては、まず裁判所に自己破産の申立てを行います。申立ての際には、申立書とともに借金の一覧や財産状況、生活状況について詳細に書き記した書類を提出する必要があります。
その後、裁判所は申立書を受理し、財産状況や借金の状況を確認します。これには数ヶ月の時間がかかることが一般的です。
裁判所が財産がほとんどないと判断した場合、管財手続きを省略し、同時に破産手続きと免責手続きを進めます。このため、同時廃止事件と呼ばれます。
なお、裁判所への申立て後、必要に応じて免責審尋(裁判官との面接)が行われます。免責審尋で問題がなければ、破産手続開始決定と同時に免責許可決定がなされます。
そして、破産宣告がされた後に、破産者本人が免責を申し立てます。この申立てが認められれば、借金は免除されます。
少額管財事件の概要と流れ
少額管財事件は、一定の財産がある場合に適用される自己破産の手続きです。また、免責不許可事由の確認が必要な場合にも少額管財事件が選択されます。
ここでもまず、裁判所に自己破産の申立てを行います。裁判所は申立てを受理し、管財人を任命して財産の管理と分配を行います。
少額管財事件では、財産の価値が一定額であれば、裁判所が全ての手続きを一手に引き受けます。
管財人は破産者の財産を一覧にし、それを裁判所に報告します。その後、管財人は裁判所の許可を得て財産を現金化します。
現金化した財産は、まず債権者への配当に充てられます。
配当が終了した後、破産者本人は裁判所に対し、借金の免責を申し立てます。免責申立てが認められれば、残った借金が全て免除され、自己破産手続きは終了します。
少額管財事件は、財産がある程度存在する場合や、特定の債権者に配当を行いたいという意向がある場合に選択されます。
その一方で、財産の管理や分配の手続きには時間がかかり、また、破産者が弁護士費用を自己負担する必要があるなど、同時廃止事件と比較して手続きが複雑になる場合があります。
専門家から一言
まとめ
自己破産は、借金を全て免除する法的手段であり、借金に困っている人々にとっては大事な救済措置です。
しかし、自己破産は決して軽い決断ではなく、信用情報機関のブラックリストに載る、一部の資格が制限される、持ち家を手放す必要が出てくるなど、様々なデメリットや制約も伴います。
一方で、生活は必ずしも劇的に悪化するわけではなく、借金のストレスから解放されるというメリットもあります。
自己破産を考えている方は、個々の状況をよく考慮し、専門家との相談を含めて慎重に判断することが重要です。